毎日の遊びには流行というものがあって、コマが流行ると、連日そればかりやる。そのうちビー球遊びが流行り始めるとまたそれが主役になる。そして、パッチ(メンコ)が流行ると、またそれを一生懸命に集める。
そんな日々を過ごしていたある日、近所の広場でぼくが見たのは、大空に浮かぶ凧であった。ものすごい空高くに、あちらでもこちらでも凧が舞っているのである。
それで家に帰って母に、凧がほしいと言った。すると母は、うちにはそんなにおカネがないんだから、辛抱しなければダメなんだよと言うのである。そうかと思って、ぼくは素直に諦めた。そして、また遊びに出かけた。凧のことを忘れて遊んでいると、姉だったか妹だったか、近所の友達だったのか忘れたが、やってきた。
「お母さんが凧を買ってくれると言っているから来なさい」と言う。なぜ急に買ってくれることになったのかわからなかったが、喜び勇んで家に行き、おカネをもらって、20円、30円ぐらいの一番安い凧を買った。
どうやって飛ばすのか、さっぱりわからない。なんか、尻尾が必要らしいというので、みようみまねで新聞紙で尻尾をつくって貼り付けてみたが、どうも飛びそうな感じがしなかった。
ままよ、とにかく広場に行ってみよう。急いで空き地に行き、懸命に揚げようとしたが、周りのお兄さん、お姉さんのようにはなかなか揚げることはできなかった。もう夢中で凧糸を持って走りまわった。
そんなことがあって後日、母がお客さんにこんな話をしていたのを聞いた。
「凧なんかがまんしなさいと言ったんですよ。でも、その後で買物に行ったら、子供たちがみんな広場に集まって、いっぱい凧が揚がっているんですよ。ああ、だから欲しかったのかと、かわいそうになってね、それで買ってあげるからと呼びに行かせたんですよ。そうしたら、飛ぶように走って帰って来てね」
自分にもこんな純情で素直な、いい子供の時期があったのかと、今になってみれば驚きである。
函館五稜郭



